ドジャース_ぜいたく税対策で後払い?_オーナーはプレミアリーグのチェルシーと同じ?

ドジャースは29日(日本時間30日)、ワールドシリーズ制覇に貢献したトミー・エドマン外野手(29)と29年まで5年総額7400万ドル(約111億円)で契約延長に合意したと発表した。
米ESPN局によると、総額の約3分の1(約37億円)が後払いで、6年目の30年は球団側が選択権を持つ。
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/5f19b167f4368425a72f3e1f725683293be894f7

ぜいたく税の基準と罰則の基準

後払いとしている理由は、アメリカの野球で導入されている戦力均衡化を目的に導入されている”ぜいたく税”対策が理由である。
ぜいたく税のルールのは下表のとおりであり、総年俸上限値(基準値)を超過した分に対して、ペナルティが課せられる。
球団にとってペナルティは大きな負担となっており、そのために、ぜいたく税対策として、年俸の後払いが発生している状況である。
総年俸上限値(基準値)
2023年 $233M
2024年 $237M
2025年 $241M
2026年 $244M
罰則の項目 罰則の内容
①基準値を超過した場合 1年目なら超過分の20%
2年連続なら超過分の30%
3年以上連続なら超過分の50%課税
なお、2年以上連続で超過していても閾値を下回った年があれば年数はリセット
②閾値を$20-40M超過した場合 超過分に対して①+12%の課税
③閾値を$40-60M超過した場合 1年目なら超過分に対して①+42.5%の課税
2年以上連続なら超過分に対して①+45%の課税
④閾値を$60M以上超過した場合 超過分に対して①+60%の課税
※2022年から新設されたカテゴリであり、MLB屈指の資産家で豊富な資金を武器に補強しているメッツのオーナー、スティーブ・コーエンの名前から別名Cohen Taxとも呼ばれる。
⑤閾値を$40M以上超過した場合 ③、④に加えて翌年のドラフト最上位指名権を10位降下
最上位指名権が全体6位以内であった場合は、2番目に高い指名権を10位降下

ぜいたく税の変遷

ぜいたく税は2003年から始まり、総年俸上限値を超えた球団が各年に支払いを行っている状況である。
過去最高額は2022年までは2015年にドジャースが支払った4360万ドルであった。
しかし、2023年にはメッツがその倍以上となる1億80万ドルを支払っている。

球団名 支払額
2003 ヤンキース 1,180万ドル
2004 ヤンキース 2,596万ドル
2004 レッドソックス 315万ドル
2004 エンゼルス 93万ドル
2005 ヤンキース 3,398万ドル
2005 レッドソックス 416万ドル
2006 ヤンキース 2,600万ドル
2006 レッドソックス 50万ドル
2007 ヤンキース 3,488万ドル
2007 レッドソックス 606万ドル
2008 ヤンキース 2,686万ドル
2008 タイガース 130万ドル
2009 ヤンキース 2,569万ドル
2010 ヤンキース 1,800万ドル
2010 レッドソックス 150万ドル
2011 ヤンキース 1,390万ドル
2011 レッドソックス 340万ドル
2012 ヤンキース 1,890万ドル
2013 ヤンキース 2,800万ドル
2013 ドジャース 1,140万ドル
2014 ヤンキース 1,833万ドル
2014 ドジャース 2,662万ドル
2015 ドジャース 4,360万ドル
2015 ヤンキース 2,610万ドル
2015 レッドソックス 180万ドル
2015 ジャイアンツ 130万ドル
2016 ドジャース 3,180万ドル
2016 ヤンキース 2,740万ドル
2016 レッドソックス 450万ドル
2016 タイガース 400万ドル
球団名 支払額
2016 ジャイアンツ 340万ドル
2016 カブス 296万ドル
2017 ドジャース 3,620万ドル
2017 ヤンキース 1,570万ドル
2017 ジャイアンツ 410万ドル
2017 タイガース 370万ドル
2017 ナショナルズ 145万ドル
2018 レッドソックス 1,195万ドル
2018 ナショナルズ 239万ドル
2019 レッドソックス 1,357万ドル
2019 カブス 742万ドル
2019 ヤンキース 637万ドル
2020  
2021 ドジャース 3,265万ドル
2021 パドレス 129万ドル
2022 ドジャース 3,240万ドル
2022 メッツ 4,080万ドル
2022 ヤンキース 970万ドル
2022 フィリーズ 290万ドル
2022 パドレス 150万ドル
2022 レッドソックス 120万ドル
2023 メッツ 10,080万ドル
2023 パドレス 3,970万ドル
2023 ヤンキース 3,240万ドル
2023 ドジャース 1,940万ドル
2023 フィリーズ 700万ドル
2023 ブルージェイズ 550万ドル
2023 ブレーブス 320万ドル
2023 レンジャース 180万ドル

ぜいたく金による支払額の総額を球団別にまとめると下表のとおりとなる。
トップはダントツでヤンキースであり、39,997万ドルであった。
また、ぜいたく税の総額としては9億2327万ドルであった。

No 球団名 支払額総額
1 ヤンキース 39,997万ドル
2 ドジャース 23,407万ドル
3 メッツ 14,160万ドル
4 レッドソックス 5,179万ドル
5 パドレス 4,249万ドル
6 カブス 1,038万ドル
7 フィリーズ 990万ドル
8 タイガース 900万ドル
9 ジャイアンツ 880万ドル
10 ブルージェイズ 550万ドル
11 ナショナルズ 384万ドル
12 ブレーブス 320万ドル
13 レンジャース 180万ドル
14 エンゼルス 93万ドル

ぜいたく税の使い道

ぜいたく税の使い道は主に選手の福利のための基金および選手の退職年金口座への基金、コミッショナーの裁量で使える機密資金である。
コミッショナーの裁量で使える機密資金とは、主に地元メディア収入の少ないスモールマーケットチームへの救済などに充てられる。

ぜいたく税対策

ドジャースのオーナーはトッド・ボーリー氏はイングランド・プレミアリーグのチェルシーのオーナーとなっている。
ぜいたく税対策として、大谷がドジャースと10年契約を結んだように、チェルシーはカイセドと8年契約、ラビアとは7年と長期契約を結んだ。
2022年の夏にもウェスレイ・フォファナ(前レスター)と6年、2023年1月にはエンソ・フェルナンデス(前ベンフィカ)、ミハイロ・ムドリク(前シャフタール)とそれぞれ8年半の契約を締結。契約期間を延ばすことで減価償却費の負担を分散していた。
しかし2023年12月13日、プレミアリーグは減価償却の分割期間を最大5年間に制限。ボーリー氏の長期契約の手法は封じられてしまった。
つまり、今後MLBにおいてもプレミアリーグと同じようにぜいたく費の抜け道に何らかの対策が行われる可能性がある。

長期契約とすることがぜいたく税対策となる理由

契約期間が長いほど、一般的に一年あたりの計算上の年俸を低く抑えられる。
理由としては「金利」が関係している。
年々インフラによりおおよそ3%程度のインフレが発生している。
例えば、100円で売っていたものがインフレによって翌年には103円となる。
年俸についても同様の事象が発生する。
しかし、長期間の契約を行えば、その期間の間は金利関係なしに定額での支払いとなる。
金利差の分だけ安価な契約を行うことが可能となる。

今後のMLBの動向についても併せて注視していくことが重要である。