米ESPN局によると、総額の約3分の1(約37億円)が後払いで、6年目の30年は球団側が選択権を持つ。
出典:https://news.yahoo.co.jp/articles/5f19b167f4368425a72f3e1f725683293be894f7
ぜいたく税の基準と罰則の基準
ぜいたく税のルールのは下表のとおりであり、総年俸上限値(基準値)を超過した分に対して、ペナルティが課せられる。
球団にとってペナルティは大きな負担となっており、そのために、ぜいたく税対策として、年俸の後払いが発生している状況である。
年 | 総年俸上限値(基準値) |
---|---|
2023年 | $233M |
2024年 | $237M |
2025年 | $241M |
2026年 | $244M |
罰則の項目 | 罰則の内容 |
---|---|
①基準値を超過した場合 | 1年目なら超過分の20% 2年連続なら超過分の30% 3年以上連続なら超過分の50%課税 なお、2年以上連続で超過していても閾値を下回った年があれば年数はリセット |
②閾値を$20-40M超過した場合 | 超過分に対して①+12%の課税 |
③閾値を$40-60M超過した場合 | 1年目なら超過分に対して①+42.5%の課税 2年以上連続なら超過分に対して①+45%の課税 |
④閾値を$60M以上超過した場合 | 超過分に対して①+60%の課税 ※2022年から新設されたカテゴリであり、MLB屈指の資産家で豊富な資金を武器に補強しているメッツのオーナー、スティーブ・コーエンの名前から別名Cohen Taxとも呼ばれる。 |
⑤閾値を$40M以上超過した場合 | ③、④に加えて翌年のドラフト最上位指名権を10位降下 最上位指名権が全体6位以内であった場合は、2番目に高い指名権を10位降下 |
ぜいたく税の変遷
ぜいたく税は2003年から始まり、総年俸上限値を超えた球団が各年に支払いを行っている状況である。
過去最高額は2022年までは2015年にドジャースが支払った4360万ドルであった。
しかし、2023年にはメッツがその倍以上となる1億80万ドルを支払っている。
年 | 球団名 | 支払額 |
---|---|---|
2003 | ヤンキース | 1,180万ドル |
2004 | ヤンキース | 2,596万ドル |
2004 | レッドソックス | 315万ドル |
2004 | エンゼルス | 93万ドル |
2005 | ヤンキース | 3,398万ドル |
2005 | レッドソックス | 416万ドル |
2006 | ヤンキース | 2,600万ドル |
2006 | レッドソックス | 50万ドル |
2007 | ヤンキース | 3,488万ドル |
2007 | レッドソックス | 606万ドル |
2008 | ヤンキース | 2,686万ドル |
2008 | タイガース | 130万ドル |
2009 | ヤンキース | 2,569万ドル |
2010 | ヤンキース | 1,800万ドル |
2010 | レッドソックス | 150万ドル |
2011 | ヤンキース | 1,390万ドル |
2011 | レッドソックス | 340万ドル |
2012 | ヤンキース | 1,890万ドル |
2013 | ヤンキース | 2,800万ドル |
2013 | ドジャース | 1,140万ドル |
2014 | ヤンキース | 1,833万ドル |
2014 | ドジャース | 2,662万ドル |
2015 | ドジャース | 4,360万ドル |
2015 | ヤンキース | 2,610万ドル |
2015 | レッドソックス | 180万ドル |
2015 | ジャイアンツ | 130万ドル |
2016 | ドジャース | 3,180万ドル |
2016 | ヤンキース | 2,740万ドル |
2016 | レッドソックス | 450万ドル |
2016 | タイガース | 400万ドル |
年 | 球団名 | 支払額 |
---|---|---|
2016 | ジャイアンツ | 340万ドル |
2016 | カブス | 296万ドル |
2017 | ドジャース | 3,620万ドル |
2017 | ヤンキース | 1,570万ドル |
2017 | ジャイアンツ | 410万ドル |
2017 | タイガース | 370万ドル |
2017 | ナショナルズ | 145万ドル |
2018 | レッドソックス | 1,195万ドル |
2018 | ナショナルズ | 239万ドル |
2019 | レッドソックス | 1,357万ドル |
2019 | カブス | 742万ドル |
2019 | ヤンキース | 637万ドル |
2020 | – | |
2021 | ドジャース | 3,265万ドル |
2021 | パドレス | 129万ドル |
2022 | ドジャース | 3,240万ドル |
2022 | メッツ | 4,080万ドル |
2022 | ヤンキース | 970万ドル |
2022 | フィリーズ | 290万ドル |
2022 | パドレス | 150万ドル |
2022 | レッドソックス | 120万ドル |
2023 | メッツ | 10,080万ドル |
2023 | パドレス | 3,970万ドル |
2023 | ヤンキース | 3,240万ドル |
2023 | ドジャース | 1,940万ドル |
2023 | フィリーズ | 700万ドル |
2023 | ブルージェイズ | 550万ドル |
2023 | ブレーブス | 320万ドル |
2023 | レンジャース | 180万ドル |
ぜいたく金による支払額の総額を球団別にまとめると下表のとおりとなる。
トップはダントツでヤンキースであり、39,997万ドルであった。
また、ぜいたく税の総額としては9億2327万ドルであった。
No | 球団名 | 支払額総額 |
---|---|---|
1 | ヤンキース | 39,997万ドル |
2 | ドジャース | 23,407万ドル |
3 | メッツ | 14,160万ドル |
4 | レッドソックス | 5,179万ドル |
5 | パドレス | 4,249万ドル |
6 | カブス | 1,038万ドル |
7 | フィリーズ | 990万ドル |
8 | タイガース | 900万ドル |
9 | ジャイアンツ | 880万ドル |
10 | ブルージェイズ | 550万ドル |
11 | ナショナルズ | 384万ドル |
12 | ブレーブス | 320万ドル |
13 | レンジャース | 180万ドル |
14 | エンゼルス | 93万ドル |
ぜいたく税の使い道
ぜいたく税の使い道は主に選手の福利のための基金および選手の退職年金口座への基金、コミッショナーの裁量で使える機密資金である。
コミッショナーの裁量で使える機密資金とは、主に地元メディア収入の少ないスモールマーケットチームへの救済などに充てられる。
ぜいたく税対策
ドジャースのオーナーはトッド・ボーリー氏はイングランド・プレミアリーグのチェルシーのオーナーとなっている。
ぜいたく税対策として、大谷がドジャースと10年契約を結んだように、チェルシーはカイセドと8年契約、ラビアとは7年と長期契約を結んだ。
2022年の夏にもウェスレイ・フォファナ(前レスター)と6年、2023年1月にはエンソ・フェルナンデス(前ベンフィカ)、ミハイロ・ムドリク(前シャフタール)とそれぞれ8年半の契約を締結。契約期間を延ばすことで減価償却費の負担を分散していた。
しかし2023年12月13日、プレミアリーグは減価償却の分割期間を最大5年間に制限。ボーリー氏の長期契約の手法は封じられてしまった。
つまり、今後MLBにおいてもプレミアリーグと同じようにぜいたく費の抜け道に何らかの対策が行われる可能性がある。
長期契約とすることがぜいたく税対策となる理由
契約期間が長いほど、一般的に一年あたりの計算上の年俸を低く抑えられる。
理由としては「金利」が関係している。
年々インフラによりおおよそ3%程度のインフレが発生している。
例えば、100円で売っていたものがインフレによって翌年には103円となる。
年俸についても同様の事象が発生する。
しかし、長期間の契約を行えば、その期間の間は金利関係なしに定額での支払いとなる。
金利差の分だけ安価な契約を行うことが可能となる。
今後のMLBの動向についても併せて注視していくことが重要である。